子宮がん検診

ワクチンを打った方も20歳以上の方は子宮がん検診が必要です。
二次検診にも対応しております。

1.子宮がん検診に触れる前に…

子宮がん検診に触れる前に子宮癌について簡単にご説明させていただきます。

子宮は大きく分けて赤ちゃんが宿るお部屋である子宮体部とお産の際に赤ちゃんがお母さんのおなかから出てくる廊下となる子宮頸部から成ります。
お部屋や廊下は木材やコンクリートがむき出しにならないように絨毯を敷いたり壁紙を貼ったりしてありますが、この絨毯や壁紙に相当する細胞が子宮体部の場合は子宮内膜上皮、子宮頸部の場合は子宮頸管上皮と呼ばれる細胞で、この細胞が癌細胞に変化し、癌細胞の群れがある程度以上の大きさに育ってしまって見つかったモノを子宮体癌、子宮頸癌といいます。
1年間に子宮がんにかかる女性の数は子宮体癌、子宮頸癌共に10,000人以上で各々年間2,500人内外の方が亡くなっておられます。以下で子宮頸癌と子宮体癌、各についてもう少し説明させていただき併せてその検診についても説明させていただきます。

母子の笑顔の写真

2.子宮頸癌とその検診について

以前より、25歳で2番目のお子さんを出産する場合が最も母児共にリスクが少ないとされていますが、現在の日本では最初のお子さんの出産年齢が平均して30歳7ヶ月程度で、統計が更新される毎に此の初産年齢の高年齢化が進行中です。
一方、子宮頸癌の患者さんの年齢分布では、25歳から35歳の層の女性に子宮頸癌患者さんが増加する傾向にあります。
つまり、今後もこの傾向が持続すると仮定すると、妊娠する前に子宮頸癌にかかってしまい、子宮頸癌の進行度によっては治療の為に子宮を失ってしまう女性が益々増加することが懸念されているのです。
例え子宮全摘出術に至らなくとも、子宮頸癌にかかることで妊娠出来てその妊娠を継続させることが出来る能力(妊孕能といいます)が損なわれる可能性が生じる訳ですが、それにも拘わらず、現時点では20代30代女性の子宮がん検診受診率の低いことが非常に問題になっているのです。

ところで、どうして子宮頸癌になるのでしょうか?

子宮頸癌の殆どは、現在100タイプ以上が確認されているHPV(ヒトパピローマウイルスHuman papillomavirus)のうち、癌化リスクが高いタイプのウイルスが子宮頸部に感染することにより生じるとされています。
HPVは多くは性行為により感染しますが、処女の方で母子感染からの発病と考えざるを得ない事例の報告もあるようです。日本人女性に占めるHPV感染者は80%以上と推定されていますが、殆どは気づかれることなく自然治癒しています。
またHPV感染による病気には尖圭コンジローマといわれる良性病変を形成するタイプのウイルス感染症もあります。
此のタイプのウイルス感染では癌化しないとされていますが、癌化リスクの高いウイルスとの混合感染の患者さんもおられます。一人の患者さんから同時に異なる4つのタイプのHPVが検出された例も報告されているようです。 

20歳以上の全ての女性が対象で2年毎に受診していただくことになっています。
子宮頸管上皮をブラシ等の器具を用いてこそげ取って、採取された細胞に異常が無いかを調べます。結果が出るのに5~7営業日程要しますので、結果の確認のため概ね1週間後に受診していただいています。NILMの結果が出れば子宮頸部に悪性疾患の疑い無しとの判断がなされ、原則として2年毎の子宮頸癌一次検診となります。但し、NILMであっても炎症等で追加の検査や治療を要する場合があります。

一次検診でNILM以外の結果がでた場合は原則として二次検診としてコルポスコープと組織診を行います。
但し一次検診の結果がASC-USの場合はHPV感染の有無に対する確認検査を追加し、ハイリスクグループ陽性の場合に限り二次検診を行い、ハイリスクグループ陰性の場合は必要があれば炎症等の良性疾患の治療の上、一次検診ないしは定期の細胞の検査となります。ハイリスクグループ有無の結果が出るのに5~7営業日程要しますので、結果の確認のため更に概ね1週間後に受診していただいています。
子宮頸癌二次検診はコルポスコープという拡大鏡で膣壁、子宮膣部、子宮頸部を観察し、異常な細胞が群れをなしていると疑われる場所を狙って生検鉗子という器具を用いて数カ所の組織を囓り採り組織診を行います。あまり痛みを感じない方が多いようですが、当院ではこの際に局所麻酔を実施することが多いです。多少出血するので止血操作を行い。翌日出血の有無を確認するため再度受診していただく場合も多いですが、出血の少ない場合は、結果が出るのに5~7営業日程要しますので、結果の確認のため概ね1週間後に受診していただいています。組織の結果異常があれば、その程度に応じて以下のような対応となります。

  1. 組織検査で軽度異形成であった場合は6ヶ月毎に細胞診を行い、必要に応じてコルポスコープの検査も行います。

  2. 組織検査で中等度異形成であった場合は3~6ヶ月毎に細胞診を行い可能な限りコルポスコープの検査も行います。

  3. 組織検査で高度異形成或いは子宮頸部上皮内癌以上の結果であった場合は、子宮円錐切除等の治療の必要があります。当院の二次検診でこの結果が出た場合は原則としてご希望の病院にご紹介いたしております。

3.子宮体癌とその検診について

子宮頸癌の様に原因が明確ではありませんが、

  • 未婚の方
  • 不妊症のご婦人
  • 閉経後の方
  • 初交や初妊の年齢が高い方
  • 妊娠や出産の回数が少ない方
  • 母乳を与えていない方
  • 30歳以上で且つ月経が不規則な方
  • エストロゲン製剤(ピルではありません)服用歴のある方
  • 肥満症の方
  • 糖尿病の既往歴のある方
  • 高血圧の既往歴のある方
  • 悪性腫瘍の既往歴のある方

以上が子宮体癌にかかりやすいハイリスクグループとして挙げられています。
これらは食事の欧米化、女性の高学歴化や社会進出に伴う初婚年齢の高齢化、非婚率の増加、少子少産化が社会背景として考えられています。

女性の悩み

自治体の子宮癌検診として実施される場合は、子宮頸癌検診に引き続いて行われることとされており、豊中市の子宮がん検診として子宮体癌検診の為に受診された方は子宮頸癌検診も合わせ実施されなければならず、子宮体癌検診のみを受診することは出来ません。
原則として50歳以上で過去6ヶ月以内に不正性器出血のあった方が対象ですが、2008年の日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告では40歳以上を対象とすることで患者層の95%をカバーし得るとの報告があり、豊中市においては現状、50歳以下の方であっても必要な場合は子宮がん検診時に子宮体癌検診を併施することが出来ています。


ところで、なぜ子宮体癌検診の対象者の選択に不正性器出血の有無が重要かを記します。
子宮体癌症例の患者さんの90%が不正性器出血を伴っており、更に付け加えますとご本人が、若年層の方ならばそれを月経不順による生理と、更年期以後の方なら相変わらずの生理として認識しておられる出血が実は不正性器出血の症状だった。と、いう事例が少なからず存在するからなのです。
受診の際には果たして直近の出血が生理だったのか不正出血だったのかは問診票の記載時や医師と対面した際に今一度、記憶を辿ってお答え下さいますようお願いいたします。
子宮体癌検診においては子宮頸管を介して子宮内膜腔まで子宮内膜細胞採取器具を挿入し、是を回転させることで子宮内膜から細胞塊を採取し、細胞検査に供することとなります。受診された方の子宮の状況によっては子宮膣部を単鈎という器具で把持し、子宮消息子という器具を子宮口から子宮頸管を拡張しつつ子宮内膜腔まで挿入してからでなければ子宮内膜細胞採取器具を挿入出来ない場合や、そもそも子宮口が完全に閉鎖していて子宮体癌検診が実施できない場合がございます。更に検診に先立つ視診で膿性帯下を認める等で子宮体部癌検診により腹膜炎を誘発する可能性の強い場合も子宮体部細胞検査の実施を見送ることなり得ることを予めご承知おき下さいますようお願い致します。実施不能或いは実施延期の場合はその後の対応について患者さんとご相談させていただくこととなります。実施可能例の方につきましては結果が出るのに5~7営業日程要しますので、結果の確認のため概ね1週間後に受診していただいています。採取された細胞数が充分確保されており且つ結果が陰性であれば悪性疾患なしと判断され原則として2年毎の子宮体癌一次検診に戻ります。陰性であっても細胞数不十分の場合は経過観察とするか保険診療に移行するか患者さんご一緒に相談させていただくことになります。

子宮体癌二次検診は子宮体癌一次検診の結果が陽性或いは擬陽性の方が対象となります。
因みに陽性例の方の87.5%と擬陽性例の方の12.5%に子宮体癌が見つかるとされています。
逆にいうと例え陽性症例であっても必ずしも子宮体癌とは限りませんので冷静に医師の説明を聞いていただきたく存じます。
子宮体癌二次検診では子宮体癌一次検診よりも多くの標本を得る為に子宮内膜を掻爬して組織片を採取する必要があります。実施に際しては子宮膣部を単鈎という器具で把持し、子宮消息子という器具を子宮口から子宮頸管を拡張しつつ子宮内膜腔まで挿入して、更に子宮頸管拡張器で充分に子宮頸管を開いてから子宮内膜掻爬の為の医療用匙という器具を挿入し子宮内膜組織を掻き採ります。当院では概ね翌日に出血や腹痛の有無の確認の為にご来院いただき、症状が無ければ結果が出るのに5~7営業日程要しますので、結果の確認のため検査実施日から概ね1週間後に受診していただいています。組織の結果に異常があれば、その程度に応じて当院では概ね以下のような対応としています。但し、子宮内膜は女性ホルモンの影響を大きく受けるため、年齢や卵巣機能不全の有無等により必ずしも下記の対応とは限りません。

  1. 正常な子宮内膜上皮細胞による子宮内膜過剰増殖を認めるに留まる場合。不正性器出血に留意しつつ経過観察。
    場合により止血剤や漢方薬、ホルモン剤内服。

  2. 細胞異型を伴わない子宮内膜増殖症の場合、子宮内膜増殖症には単純型と複雑型がありますが両型共に80%が6ヶ月後に消失と判断されるとされており、自然経過観察で6ヶ月後も病変が存続した症例が単純型では17%。
    複雑型では25%との報告もあります。但し単純型の1%。複雑型の3%で癌化を認めたとの報告もある為、当院では年齢等により漢方薬やホルモン剤を内服していただく等して概ね6ヶ月毎に子宮内膜細胞診で経過観察としています。

  3. 異型を伴う子宮内膜増殖症或いはそれ以上の病変の場合。
    異型内膜増殖症は前がん病変とされており、子宮内膜全面掻爬術を行って精査することとされていますが、異型内膜増殖症との診断で摘出された子宮を検討したところ既に17%~50%に子宮内膜癌の併存病変を認めたとの報告もある為、組織診で異型内膜増殖症以上の病変を認めた場合は概ね子宮内膜全面掻爬術を行う事無く、ご希望の病院にご紹介させていただいております。

4.子宮がんのより詳しい検査や治療については…

一口に癌といっても治療の前にその癌の細胞の種類、病変の広がり等を様々な検査で決定しなければ治療方針は定まりません。
細胞の種類の確定には採取した組織や細胞に対する免疫染色で薬や放射線などの有効性の度合いが事前に判断できる場合があります。画像診断にはCTやMRI更にPET等で子宮内病変の広がりや卵巣や膀胱や直腸等近接臓器に達しているか否か、リンパ節は腫れていないか等を確認し手術の術式を決定しますが、初婚年齢の上昇や新薬の創世、診断機器や手術機材、麻酔も含めた医療技術の進展により妊孕能の温存に対する要請が高まっている今日、患者さんの状況や紹介先病院の先生方のお考えにより方針は異なります。例えばMRIの撮影一つにしても副作用を回避するためガドリウム造影剤を用いない先生もおられれば病変の境界線をより詳細に得るため積極的に用いられる先生もおられるでしょう。当院から某大学病院に紹介させていただいた子宮内膜癌の患者さんは、定型的には子宮全摘出術となる症例でしたが、新婚間もないご婦人であった為、また抗癌剤が奏効することが期待されるタイプの癌細胞だった為、抗癌剤だけで治療していただけた症例となりました。

当院はゲートキーパー役に徹するべき診療所と考えております。
詳細な検査や治療についての記載はこの程度にとどめさせていただきます。
もし、子宮がんの可能性が高くより詳しい検査が必要になった場合や不運にして癌との診断の下に治療が必要となっておられる場合は主治医の先生に先ずおたずね下さい。